南フランスの想い出(2)小さな村めぐり

「まこ。良かったら南フランスに来たときによっていきなさい。」

以前フランス料理の通訳をしていたとき、フランスから来日していたグランドシェフの中にアンドレ・シャリアルという名料理人がいた。

彼はレボーという小さな村の山の中腹にあるオーベルジュの経営者兼シェフだった。

そんな誘いに私の胸は高鳴った。彼のお祖父さんはプロヴァンス料理を今までにないハイレベルまで持ち上げたナンバーワンのシェフであった。

レボーという本当に小さな山の中腹、何もないところに彼のオーベルジュ ボーマニエールはあった。

35年間も三つ星を保ち続けたが最近は星をおとしている。

宿泊しているホテルから眺める中庭といい、中腹からレボーを見渡たす風景といい文句なしに素晴らしい。

夜になると照明がライトアップされてプールが青白く浮き上がっていくような神秘的な空間になる。

このプールサイドで食べる夕食と朝食はプロヴァンスならではの心地よさであろう。

私が一人で食事をしていると突然厨房からシャリアル氏が現れた。

「まこ。美しいところでしょ。私はここでの素晴らしい風景をすべての人々と共にわかちあいたいんだ」

そういって、一杯のシャンパンをごちそうしてくれた。

なすのキャビアは現地特産のオリーブを使った絶妙な一品、地中海原産のオマール海老を使った一品、直径2cmくらいあるアスパラガスのグラタンは今までに味わったことのない絶妙なマリアージュの一品だった。

⚫オーベルジュで心癒やされた後は、オリーブ農園「Fontune arizzi」を訪れる。

南フランスにはオリーブ街道がいくつにも連なる。ここの農園はこじんまりとした庶民的な経営とあって、家族みんなで迎えてくれた。

夏の太陽を満面に浴びたオリーブを洗い大きな挽き臼で潰す。

ペースト状になったオリーブはスクールタンと呼ばれる椰子の実の繊維で編まれたフィルターに広げる。このフィルターを何枚にも重ねてプレスすると水と混ざった油が出てくる。これを分解させると一番搾りのオリーブオイルのできあがりである。

オリーブ5kgを絞ると1リットルのオイルが採れるのだそうだ

このオリーブ農園の領主は自ら昔ながらのオリーブ栽培の工程を説明してくれた。

説明を聞いた後、近くのチーズ専門の農家オーベルジュ(Ferme Auberge du Bas Chalus)でモンドールというチーズを食べる。クリーミーなチーズを葉に包んだものを、フォンデュー風に溶かしてバゲットの上にのせる。その上に、このアリジおじさんのオリーブをかけてたべる。濃厚でパンとチーズ、オリーブだけでおなかがいっぱい。

⚫アンチックの街ソルグ村を訪れる。

お腹が満たされた後、イルシューラソルグ村に向かう。

日曜日だけアンチック市場は開催しているので、フランス中、色々なところからやってくる人でごった返す。


街の中心部に川が流れ、その川沿いにアンティークショップがたくさん並んでいる。
小さな街なので散歩しても30分もかからないほどで、あちこちに水車が残り、また街の建物が中世の面影を残し、街全体が骨董品のようだ。


結局、アンティークのバカラのシャンペングラス、サルグミンヌの陶器のお皿などを買う。

⚫タラスコン プロヴァンス生地の街に立ち寄る。

この地方の草花をモチーフにし独特の捺し染めの製法による生地で有名なソレイアード。

ソレイアードとは、雨上がりの太陽の光を意味し、プロヴァンスの太陽のように情熱的な色彩をイメージした生地が立ち並ぶ。

ここは元来東洋~地中海~マルセイユの経路で文化が伝わり、その生地もなんとなく東洋の色彩が放つ。

プロヴァンスと東洋が融合したような、そんな模様の生地が目立つ。

天然染料の調合の様子、木製の押し型などプリント技術などを教えてもらう。

⚫マノスクのサントン人形

タラスコンから近くのプロヴァンスのサントン人形(クリスマスに飾るイエス誕生をお祝いする村人の人形)を作っている村に向かった。

もともとはキリスト生誕の様子を粘土の人形で表したのが始まり。やがて農夫や羊飼い、洗濯女などこの地方の庶民の暮らしぶりもモデルにするようになった。

大量生産せず昔ながらの技法を守って一つ一つ時間と労力をかけて作っている。

フランスの友人クリスチーヌの紹介でマリーテレーズとニコルが型から絵付けまですべての工程をみせてくれた。

この繊細で技巧のいる作業が一つ一つお人形の表情を作っていく。

アーチザンのすばらしさに感動したものだった。

⚫マノスクからグラースに行く。

バスでグラースに行く途中、突然羊飼いの率いる羊の軍団がぞろぞろと押し寄せてきた。

この羊飼いはちょっと斜めに帽子をかぶった粋な女性だ。

道ばたの標識を見ると「道を横切る羊の軍団に要注意」とのこと。

運転手によるとよく羊の群衆が道路にでてくるので気をつけないと危ないらしい。

「さっさとあるきなさい。」羊飼いの声が村中にひとしきり響いていく。

そんなことで今回は南フランスのイーストサイドの小さな村々を散策しました。

次回は南フランスのサウスコーストを旅します。

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