お庭のサクランボでクラフティ

(前回の続き)

ブザンソンに下宿していたとき、ゴベッティ家の広いお庭の果樹から果物を摘み取るのが私の仕事だった。

籠の中にサクランボをいっぱいにする。

早速お庭のさくらんぼを使ってマダムゴベッティと二人でクラフティを作り始める。

摘み取ったばかりのさくらんぼの芯の部分をとり、種抜き器で種を取りお砂糖をまぶす。水分が出たら汁をとり除く。

大きめのオバル(楕円形)のグラタン皿にサクランボをのせる。

アパレイユ(卵、牛乳、砂糖、バターなど)を混ぜたものを流し入れ、180度のオーブンで40分焼く。

マダムゴベッティはオーブンから熱々のクラフティを取り出す。

できたてのクラフティをテーブルの上にのせる。

voila, allez, profitez-en(さあ、召し上がれ)

「あなたが摘んでくれたサクランボだよ。きっと美味しいよ」

 

年金生活をしていたマダムはもう高いところで収穫の作業するのはしんどいようだった。子供たちも独立してパリに行っていたので、私が下宿していることを本当に喜んでいた。ちょうど娘のように私をかわいがってくれたのだ。

果物をもぎ取ったり、そのフルーツで一緒にお菓子を作るようになってから、とても親密な関係になっていった。

「Clafoutisといって フランスの中央部に位置するリムーザン地方の家庭では定番のスイーツよ」

 

クラフティの語源はこの地方の方言Clafir(~敷き詰める)からきたもので、定番のサクランボを始め、洋梨、黄桃、林檎などの果物を敷き込んで、アパレイユを流したものだ。

サクランボのクラフティはフランスのどこ行っても家庭で作られているママンの味。

三つ星のレストランやお菓子屋さんではいろいろなアレンジをしてトレンドのお菓子を出しているが、私はクラッシックな家庭の素朴なフランスのお菓子が好きだ。

原点に返って昔ながらのクラフティを作ってみた。

味はシンプルだがこれが本当のフランス家庭の味だと思う。

日本のお菓子のレベルはすごく高いので、このような簡単で素朴なお菓子を食べたらあまり感動しないかもしれないが、実際にフランス人はとても保守的で昔ながらの伝統的な味を大事にし、守り続けている。

 

フランスにはサクランボの種類がたくさんあって、日本のナポレオンにどちらかというと似たものがBrulatという南西部特産の深紅の少し大きめの品種かな。

アメリカンチェリーににたcerise noirという濃い赤紫のもの、cerise griotteというアルザス地方特産のサワーチェリーなど。

家でできたサクランボはどちらかというとgriotte に似た小さくて少し酸っぱい品種のようだ。きび砂糖にまぶしておくと甘酸っぱいくなり美味しくなる。

材料(4人分)

さくらんぼ

卵   2個

砂糖  80g

塩   ひとつまみ

小麦粉  50g

溶かしバター 20g

牛乳   100cc

生クリーム 150cc

バニラエッセンス

ブランディ  大1杯

1)卵と砂糖をするようにして、ホイッパーで混ぜる。

2)塩とふるった小麦粉を入れて、とろっとするまで混ぜる。

3)牛乳、生クリームを加える。

4)なめらかになったら溶かしバター、バニラエッセンス、ブランディを加える。

5)タルト型に水分を取ったサクランボを敷き詰め、上から4)のアパレイユを流す。

6)180度のオーブンで40分焼く。

我が家では種は取らないで、そのまま生のサクランボを敷き詰め、アパレイユを流し焼く。本当に素朴でクラシックなフランスの味だ。

残ったサクランボはきび砂糖をふりかけ、半日つけておく。

それをルクルーゼ鍋で1時間煮て、コンポートを作る。

二瓶作れたので、今年はこれで間に合いそうだ。

今では時短、時短といってより早い情報をキャッチし、そしてタイムパーフォーマンスの濃い時間の使い方をしている人が多い。

果樹を育て、収穫し、煮たり焼いたりしてスイーツを作り、お茶と共に嗜む。

この一連の作業はとても時間と手間がかかるものだ。

しかし、週末くらいは、のんびりしながら、この何でもない時間をゆったりとすごすというのもとても大切なことに思える。

これで今年のサクランボ仕事はやっと終わった。

なんかゴベッティ家に滞在していた時のような気分になった。

マダムゴベッティはもう15年前に亡くなってしまったが、彼女から教えてもらったレシピは今でも書棚にしまってある。

 

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