
「一度、ルーアンに遊びに来ない?」
アニーはパリ郊外のアパートで一緒に共同生活をしていた女学生だった。
ソルボンヌ大学の文学部を中退し、ノルマンディのルーアンの美術学校に籍を入れていた。
パリにいた時はアルバイトでエコールデボーザール(国立高等美術学校)で裸婦のモデルのアルバイトをしていた。生徒たちとふれ合っているうちに絵の世界にはまったらしい。
「文学も面白いけど、やっぱり好きだったデザインの方に行きたかったの。。。」と
そんなことで、パリのサンラザール駅から、ルーアンまで電車1時間20分くらい。
車窓から眺める風景、眼鏡をかけた?牛(ノルマン種)が牧草を食む姿、一面に広がる林檎畑などが美しい。
ルーアンに到着し彼女のアパートの入り口の番号を押して屋根裏部屋まで登る。
部屋に入ると、アニーの個性豊かな世界が待ち構えていた。
年代物のアンチック品を天井からつるしてある。
お皿、鍋、小さな椅子、アイロン(コードレス)、フォークやスプーン
「へ~これは、なに?」
100年前のアイロン、18世紀に貴族が使っていた銅鍋、年代物のお皿などだそうだ。
オブジェが一体化した空間そのものであった。
「時空を超えて輝くものよ」
なんとも私には理解できないものであったが、今までに見たこともないアート作品が天井から吊るしてあった。美術館というよりも、まるで博物館のような感覚である。
一休みした後、彼女の通っている美術学校にも案内してくれた。
ル・アーヴル=ルーアン美術学校は1841年に創設された由緒ある学校だ。敷地内の広い空間にクロッキー、デッサン、油絵、彫刻そして、木工や陶芸の工房などがあり、いろいろなモチーフをもとに若い学生が作品作りに取り組んでいた。
アニーはここで空間デザインを学んでいた。いろいろなワークショップを案内してくれ、興味津々見て回り、アパートに戻る。
彼女の部屋のアトリエの片隅に小さなキッチンがあった。
アニーはお菓子作りも大好きで、ノルマンディ名産のりんご(Reinette種)をキャラメリゼして作ったカトルカール(パウンドケーキ)をだしてくれた。
ノルマンディは林檎の産地である。至る所に林檎の木々が見られる。
スイーツに使う林檎はレネット種かカルヴィル・ブラン種だ。
酸味とほどよい甘みがあり、加熱すると美味しさを増す品種だ。
アニーの作ってくれた林檎のケークはとてもセンスがいい。
林檎の上にはアンズのジャムを塗り、その上に林檎の葉っぱでデコレをしていた。
創造性ゆたかで、さすがアーチスト、お菓子作りもうまい。
ノルマンディ地方はパリから日帰りが出来るところなので、小さな旅をするのにとても便利なところだ。
「また遊びに来るね。」
アニーが作ってくれた残りの林檎のスイーツをリュックサックに詰め込み、名残惜しそうにアパートを後にすると、ルーアンの駅へと向かった。
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