南フランスといえば美術館、博物館の宝庫である。
多くの著名な画家たちが光を求めて美しい南仏の風景にあこがれ、居を構えた画家のアトリエもこの地に集中している。
今回は画家たちが暮らしたアトリエや博物館などを中心に南フランスのイーストサイドを散策してみましょう。
●Saint Paul de Vence(マチスの教会)
「陽気さと人々を幸せにする空間」と画家マチスが病と闘いながら4年の歳月をかけて作った教会。
マチスはこの「鷲の巣村」といわれるVenceのシュロの樹に囲まれた小さなチャペルをロザリオ礼拝堂と名付けた。
三色(グリーン・マリーンブルー・レモンイエロー)で構成されたステンドグラス、そこから差し込む陽光をうける白いタイルはまさにコートダジュールの空と海の明るさを思わせる。
●Cagne sur Mer(ルノワールの住んだコレット荘)
ルノワールの家に至る道を歩いていると、明るい陽光が赤い屋根や白い壁をくっきりと浮かび上がらせる。
彼の住んだ家コレット荘は地中海を見渡せる丘の上にありアトリエが生前のまま残されていた。
私が行った日は、たまたま映画の撮影中で、お庭の食卓にはディナーの準備がされていて印象深かった。
ルノワールのアトリエのあるコレット荘
●Villeneuve(フランス料理の先駆者エスコフィエの博物館)
料理長の王か王の料理長かとうたわれ料理界最高の芸術家といわれたエスコフィエ(1846~1918)
当時はすべての食事が儀式である祭りであった古い時代の上に、古典料理が築かれていった。しかし彼は時代とともに料理にも変革を加えていった。セザール・リッツと知り合ってから、二人は高級ホテルで成功を遂げ、パリのリッツ、ロンドンのカールトンなどオープンしホテル業界に輝かしい業績を残していく。
恋人メルバにあてた手紙(ピーチメルバは彼女をネーミングにしたもの)
エスコフィエ誕生の地が現在は博物館となっている。
●Vallauris(ピカソのアトリエ)
ヴァロリスは今でもフランスにおける陶芸の中心地である。ピカソは1943年にここに移り住み様々な陶芸を倒錯した。ヴァロリス城は現在ではピカソ美術館になっており、礼拝堂には壁画「戦争と平和」がある。当時は荒れ果てていたものの、新しく礼拝堂が建てられ、またこの絵の存在によってこの村は美しく蘇っていった。
●Saint paul de Mansol(ゴッホの療養所)
ローマ時代の遺跡が残るサンレミの街のはずれに、オリーブの木や糸杉に囲まれたゴッホが療養生活を送った病院がある。サンレミの風景を描いた彼の作品を見ると、時としてその狂気と創造とが入り混ざり合った神秘的なものを感じる。このサンレミの強い光は「人間のすさまじいパッション」を駆り立てるような強烈なものにゴッホの脳裏をかすめたのであろう。
●シャガール美術館
色彩の魔術師と呼ばれたマルク・シャガールの美術館。
旧約聖書をモチーフにした作品を中心に450点程を展示してある。
17点の油絵で構成される超大作は目を圧倒させられ一見の価値がある。
●Eix en Provence(セザンヌの生まれ故郷)
エックスの街中にはプラタナス並木が続きおしゃれなカフェが立ち並ぶ。
セザンヌは1839年この町で生まれた。少年時代は同じエックス生まれの小説家のエミールゾラと共にアルク川水浴場によく出かけた。エクスの街を東へ行くと「セザンヌの道」と呼ばれる街道があって、セザンヌがよくキャンバスをもって描いた風景に出会える。
●Mougins
最後は当時3つ星であった(今は現存しない)moulin de mouginsムーランドムージャンでお食事会。ここはエリザベス女王、天皇陛下やソフィアローレンなども会食したという由緒あるレストランである。
今回の画家のアトリエの旅の最後を飾ってここで一息つきましょう。
奥さんのデゥニーズと共にシェフのロジェベルジェは5年間で見事三ツ星を獲得した天才シェフだ。
二人の美的センスは南仏の最高峰ともいわれるほど洗練されたエスプリと雰囲気を醸し出している。
そんなことで三ツ星の食事に満喫した後は、付設のオーベルジュに一泊する。
次回は南フランスのウエストサイドをめぐりましょう。
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